令和3年4月1日よりVISITとCHASEが統合され、全介護事業者が利用できるようになった科学的介護情報システム「LIFE」。令和3年度介護報酬改定では、LIFEの導入を前提とした加算が新設され、ますます注目を浴びています。
LIFEはケアプランや利用者のデータから状態を分析し、これに対して厚生労働省からのフィードバックを受けられる仕組みです。導入のメリットや手順、科学的介護推進体制加算などについて、詳しく解説します。
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目次
科学的介護情報システム「LIFE」とは?
科学的介護情報システム「LIFE」とは、システムに入力したケアプランや利用者の状態を分析して、厚生労働省からフィードバックを受けられる仕組みです。
導入した場合、各事業所が指定の様式に従って利用者の状態に関するデータ(基本情報、ケア内容など)を登録後、エビデンスに基づき厚生労働省から利用者ごともしくは事業所ごとにフィードバックが届く流れになっています。
LIFEに蓄積されたデータは、介護分野における新しい発見やフィードバック内容の充実化などに活用されます。
LIFE誕生の背景と目的
厚生労働省では、通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集システム「VISIT」と、高齢者の状態やケアの内容などデータ収集システム「CHASE」を運用し、情報収集を行ってきましたが、令和3年4月1日よりVISITとCHASEを統合し、科学的介護情報システム「LIFE」として一体的な運用を開始しました。
LIFEは自立支援などの効果を科学的に分析して、ケアの質の向上に活かす目的として「科学的介護」の取り組みが重視されたことで誕生しました。令和3年度の介護報酬改定で、LIFEの活用を前提とした加算も増えてきているので、今後ますます注目度が高まっていくことが予想されています。
LIFE導入のメリット
LIFEは国内の介護事業者のデータをもとに、利用者の置かれた状況に合わせたより質の高いケアを提供できる点が大きなメリットです。これまで介護で行われてきたケアは、ほかの施設や事業所と比較する機会がなく、介護サービスの質を正しく評価ができていない側面がありました。
今後LIFEを活用すれば、全国のデータをもとに一定の基準でケアの質を判断することができるようになります。さらにLIFEを介して得たフィードバックを活用し、ケアプランや介護計画書を見直すことで、より質の高い介護サービスが目指せるでしょう。さらに、要件を満たすことで加算を算定できるため事業所の収入アップにも繋がります。
科学的介護推進体制加算とは?
科学的介護推進体制加算は、令和3年度の介護報酬改定で新設された加算です。LIFEへデータを提出し、フィードバックを受けながら、ケアの質向上を目指す施設や事業所を評価する加算となります。
利用者すべての情報を入力する必要がありますが、加算によって登録する情報に違いがあります。ここでは科学的介護推進体制加算の対象者や算定要件などについて詳しく解説していきます。
対象の事業者と単位数
科学的介護推進体制加算は、介護療養型医療施設を除いた施設系サービス、通所系・多機能系・居住系サービスが算定できます。
単位を以下の表でまとめました。下記は利用者1人ごとに算定します。
施設系サービス | 科学的介護推進体制加算(Ⅰ) | 40単位/月 |
---|---|---|
科学的介護推進体制加算(Ⅱ) | 60単位/月 | 特養・地域特養に限り 50単位/月 |
通所系/多機能系/居住系サービス | 科学的介護推進体制加算 | 40単位/月 |
2つの算定要件
科学的介護推進体制加算には「LIFEを活用して厚労省に利用者の情報を提出すること」「PDCAサイクルを回すこと」という2つの算定要件が定められています。正しく算定するためにも次に解説する内容をしっかり覚えましょう。
LIFEを活用して厚労省に利用者の情報を提出すること
算定要件(イ)として定められているのが、「利用者に関する情報の提出」です。LIFEに心身の状況をはじめとした利用者の基本的な情報を登録しなければなりません。この情報は利用者ごとにそれぞれ登録が必要となります。
基本的に登録する情報は以下のとおりです。
- 生年月日や性別、保険者番号などの基本情報
- 既往歴
- 服薬情報
- ADLや在宅復帰の有無など
- 日常生活自立度
- 口腔機能
- 栄養状態
- 認知症の状況
任意項目以外の情報についてもなるべく提出したほうがよいとされています。
ただし、科学的介護推進体制加算(Ⅱ)を算定する際は、やむを得ない場合を除き、既往歴や服薬情報を必ず提出する必要があります。
上記の情報は次の1~4に該当する月の翌月10日までに提出しなければなりません。
- 算定を開始しようとする月
- 算定を開始した月以降にサービスを利用し始めた利用者がいる場合は、利用を開始した月
- 上記1・2のほか、少なくとも6ヶ月ごと
- サービスの利用を終了する月
PDCAサイクルを回すこと
算定要件(ロ)では、LIFEでフィードバックされた情報を活用して、PDCAサイクルを回すことが求められています。
PDCAサイクルとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価・分析)」「Action(改善)」の頭文字をとった、マネジメント手法です。計画を実行したあとに分析し、改善を加えたうえでまた実践に移すというサイクルを経ることで、業務の改善を図っていきます。
科学的介護推進体制加算では「Check」の段階でデータを提出し、フィードバックをもらって「Action」へ進むイメージです。厚労省のフィードバックをもとにプランを見直し、実践・分析・評価を重ねることで、ケアの質を向上させる効果が期待できます。
LIFEの活用が要件となる加算について
科学的介護推進体制加算以外に、LIFEの活用が必要な加算を箇条書きでまとめました。
- 個別機能訓練加算(Ⅱ)
- ADL維持等加算(Ⅰ)/(Ⅱ)
- リハビリテーションマネジメント計画書情報加算
- リハビリテーションマネジメント加算(A)ロ/(B)ロ
- 理学療法、作業療法及び言語聴覚療法に係る加算
- 褥瘡マネジメント加算(Ⅰ)/(Ⅱ)
- 褥瘡対策指導管理(Ⅱ)
- 排せつ支援加算(Ⅰ)/(Ⅱ)/(Ⅲ)
- 自立支援促進加算
- かかりつけ医連携薬剤調整加算
- 薬剤管理指導
- 栄養マネジメント強化加算
- 口腔衛生管理加算(Ⅱ)
- 栄養アセスメント加算
それぞれ対象となる介護サービス事業所は加算ごとに異なります。詳しくはこちらの表も参考にしてみてください。
LIFEの導入手順と活用方法
最後に、LIFEを導入する際に必要な事前準備や手順、実際の活用法について解説していきます。
①公式サイトで利用申請
まずは利用申請からスタートします。インターネットにつながるパソコンを用意したらLIFEの公式サイトを開き、「新規登録」ボタンから利用申請を行ってください。
利用申請の登録は、毎月25日が締め切りとなります。4月から加算したい場合、3月25日までに利用申請を行う必要があります。25日までに申請することで翌月頭に利用案内が届きますので、時間に余裕を持って申請するようにしましょう。
また、ネットワークオプションの設定と、セキュリティソフトの設定変更を事前に行わないと、ログイン時に不具合が起きる場合があります。詳しい操作方法はLIFEの公式サイトの操作マニュアルから確認できます。
②届いたハガキをもとにユーザー登録
利用申請が済むと、翌月にログインIDやパスワードに関する情報がハガキで届きます。これまでにCHASEかVISITを活用していた方は、LIFEでも同じIDとパスワードが引き継がれます。両方のシステムを利用していた場合は、CHASEのIDとパスワードをそのまま使用できるので確認しましょう。
そのIDとパスワードを使って、LIFEの公式サイトでユーザー登録を行ってください。「管理ユーザー」と、実際に入力を行う「操作職員」をそれぞれ登録する必要があります。
デスクトップにLIFEの「起動アイコン」を配置しておけば、いつでも簡単にLIFEを開けるのでさらに便利に活用できます。起動アイコンは、ハガキに記載のURLからダウンロードが可能です。
③利用者の情報を入力
利用者の情報を入力して登録します。手入力で行う方法以外に、介護ソフトのCSVファイルで取り込む方法があります。介護ソフトを導入している事業所はうまく活用しましょう。
LIFEには、ADLや栄養状態、口腔・嚥下機能、認知症など200項目以上が入力できますが、すべて入力する必要はなく、加算に必要な項目のみで構いません。
入力したデータは事業所内で確認することができますが、厚生労働省に送られる情報はすべて匿名になっています。全国の介護施設や事業所から集まった情報が厚生労働省のデータベースに蓄積され、その情報をもとにしてさらにフィードバックの精度が高まっていくことが期待されます。
④データの提出
科学的介護推進体制加算については、LIFEへのデータ提出は基本的に6ヶ月に1回です。しかし、他の介護報酬加算を受けている事業所については、3ヶ月に1回のデータ提出が求められます。
6ヶ月ごと |
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---|---|
3ヶ月ごと |
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なお、各データの提出は毎月10日までが期限です。締切りを過ぎた場合、その月の科学的介護推進体制加算を得られなくなる可能性があるので注意してください。
⑤フィードバックデータの活用
フィードバックデータは、LIFEにログインしてダウンロードすることができるため、管理者と操作職員のいずれも取得することができます。
このフィードバックは、全国各地の事業所から集められたデータを元に分析されたものです。内容を受けて各事業所では計画書の見直しを図り、改善に活用することでケアの質の向上を目指せます。
LIFEを活用して介護報酬の加算を算定しよう
フィードバックを活用して介護サービスの質を評価し、さらなる質向上に期待できる科学的介護情報システム「LIFE」。科学的介護の取り組みを推進するため、令和3年度の介護報酬改定ではLIFEの導入を前提とした加算が新設されました。今後、介護現場でのLIFEの活用はより注目されていくと考えられます。
LIFEはインターネットにつながるパソコンがあれば無料で利用できるので、この機会に導入を検討してみてください。